03.19.2024
日本から海外配信

米国のテレビを取り巻く環境の変化

※Boundless株式会社は、米国に本社を構えるYahooグループの日本法人です。

近年、テレビの視聴スタイルが多様化し、米国をはじめ世界的に従来型リニアTV(地上波、ケーブル、衛星放送)の視聴者が減少し、デジタルで視聴する人が増えています。その動向として特に注目されているのが、動画ストリーミングサービスのCTV視聴です。CTV(Connected TV、コネクテッドTVの略語)とは、インターネット回線に接続されたテレビ端末のことで、スマートTV、ChromecastやAmazon Firestick TVなどのストリーミングデバイス、そしてゲーム機など、インターネット回線に接続されたテレビ端末を指します。
 

CTVとは?


日本においては、成長途中で、今後、より一層の拡大が期待されているCTV領域ですが、米国では、近年の動画ストリーミングサービスの成長と競争の激化に伴い、テレビを取り巻く環境が大きく変化しています。テレビ業界の成長エンジンである動画ストリーミングとCTV市場の注目すべきトレンドや日本とは異なる米国のテレビ視聴文化などをまとめていきます。

 

配信ネットワークとしてインターネットが主流に

テレビを視聴する方法は多様化し、デジタルで視聴する世帯が主流になりつつあります。

Leichtman Research Groupの調査によると、米国のTV世帯の87%がなんらかのCTVデバイスを少なくとも1台所有していることが明らかになっています。この数字は、2020年の80%、2017年の69%、2012年の38%から劇的に増加している状況です。

対して、従来型リニアTVにおいては、eMarketerの推計では、従来型リニアTVの加入を継続している米国の世帯は約44%と報告されており、2024年に40%、そしてさらに、2027年には31.9%と年々減少傾向を示しています。
 

従来型リニアTVの視聴世帯

従来型リニアTVの視聴世帯

基本的に無料でテレビ視聴ができる日本とは異なり、米国では、従来型リニアTVを視聴するために加入契約をして月額料金を支払うことになります。CordCutting.comの調査によると、米国の消費者は、平均的に、月額およそ$147USDを支払い、190チャンネルにアクセスできるパッケージを契約しているケースが大半のようですが、実際に視聴するチャンネル数は15程度であり、無駄な出費であることを指摘する報告もあります。

近年、動画ストリーミングサービス各社による広告付き低価格プランの展開も進んでいます。複数の動画ストリーミングサービスを利用しても、従来型リニアTVの月額料金の約1/3のコストに抑えられることもあり、今後もコードカット(地上波、ケーブル、衛星放送の契約を打ち切ること)が進むことが予想されています。
 

月間コストの具体例(複数のストリーミングアプリの契約 vs ケーブルTVの契約)

月間コストの具体例(複数のストリーミングアプリの契約 vs ケーブルTVの契約)


加入者数から収益性へと焦点が移行

動画ストリーミングサービスへの加入者数が増えている一方、各社はより収益性を高めるために競い合い、サブスクリプションの加入者数からARPU(ユーザー1人当たりの平均収益)を上げる方向へシフトしています。

サブスクリプション価格の値上げ、広告付きプランの展開、また、世帯外でのアカウント共有やパスワード共有に対する取り締まりなどを導入し、各社はARPUを重要な指標とする動きを展開しています。

 

これらの動きを背景に、ユーザー側は、低価格の広告付きプランへの切り替えや新規加入にシフトしている傾向にあります。米調査会社Antennaによると、2023年11月の米国のSVOD(定額制動画配信サービス)の契約数全体においては、初めて広告付きプランの契約数が、広告なしのプランの契約数を上回ったことを報告しています。
 

SVOD月間契約数 - 広告なしプラン vs 広告付きプラン

SVOD月間契約数 - 広告なしプラン vs 広告付きプラン

 

消費者は、さまざまなオリジナルコンテンツを楽しむため、複数の動画ストリーミングサービスを契約することもあり、低価格の広告付きプランを選び、コストを抑える傾向が出てきているようです。
 

米国における主要ストリーミング各社の月額料金(2024年1月現在)

米国における主要ストリーミング各社の月額料金(2024年1月現在)

 

こういった動きによって、動画ストリーミングサービスにおける広告の機会が増加しており、近年、広告戦略において重要な要素となっています。

また、前述の通り、最近では従来型リニアTVを解約するユーザーも増えてきているため、従来型リニアTV上のTVCMだけではリーチができないユーザー群が発生してきています。広告主側としても、幅広いリーチを獲得するため、そして、TVCMではリーチすることができないユーザーへのインクリメンタルリーチを拡大させるために、CTVというチャネルを使った広告出稿は欠かすことのできないものとなってきています。
 

従来方リニアテレビのみに広告を出稿した場合、44%程度の世帯にしかリーチができない

従来方リニアテレビのみに広告を出稿した場合、44%程度の世帯にしかリーチができない

 

プレイヤーの統合の動き

動画ストリーミングサービス側の動きも活発です。Disney+と主要ケーブルTVのCharter Spectrum間の配信契約や、HBO MaxとDiscovery+(Max)、Paramount+とShowtime(Paramount with Showtime)、HuluとDisney+など、統合が加速しています。

こういった動きは、視聴者としてはユーザビリティがよくなったり、利用サービスを減らすことができるなどの利点があるかと思います。一方、広告主側としては、これらの統合によりデータが一元化される可能性が出てきたり、従来型リニアTVの視聴者へのアクセスも実現されてきます。このような動きがさらに進むことで、CTVを含むテレビ広告が、より入札可能でアドレサブルなものになり、視聴者に合った関連性の高いメッセージを届けることができるようになります。

 

まとめ

消費者にとっては、単なる「テレビ」というただのスクリーンでしかありませんが、現状、広告関係者にとっては、「従来型リニアTV」と「CTV」の2つのセグメントに分けて考え、オーディエンスに対して最大限のリーチを実現するため、双方を考慮したマーケティング戦略が必要不可欠です。

当社では、このような現地の急速な市場の動きやランドスケープの変化に対応し、効果的なマーケティングアプローチが実現できるよう、キャンペーンそれぞれのニーズに合った最適な海外プロモーションのプランをご提案いたします。どうぞお気軽にご相談ください!

 

※Boundless株式会社は、米国に本社を構えるYahooグループの日本法人です。
Boundlessは、グローバル企業として、豊富な実績と知見を活かし、日本企業の海外展開、海外企業の日本展開を支援するグローバル広告ソリューションを提供しています。

  

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