Privacy Sandboxとの統合:ソリューションの概要と導入に向けた進捗
※Boundless株式会社は、米国に本社を構えるYahooグループの日本法人です。
筆者:
Gio Gardelli / Vice President of Ads Data Products
業界はアイデンティティの変革の真っただ中にあり、ユーザーのプライバシーが重視され、サードパーティーcookieがブラウザから排除される広告の新時代に向けて体制を整えています。最大の転換は、サードパーティーcookieをいま現在許可している最大のブラウザであるChromeによって行われます。そして、サードパーティーcookieの完全廃止を延期するというGoogleの最近の発表があったとはいえ、今になってもChromeトラフィックのうちcookieレスは1%でしかありません。Chromeは、2025年初頭に全ユーザーに対してサードパーティーcookieの制限を進めることを計画しており、現在それを実現するために英国の競争市場庁(CMA)と協力を進めています。当社は、Googleの代替ソリューションであるPrivacy Sandboxを検証することで、Chromeの移行に参加しています。この検証の結果は、Googleが広告主や業界のニーズを満たすためにPrivacy Sandboxをどのように統合するかに反映されていきます。
業界のコラボレーションを期待
当社では、アイデンティティに制約のある世界に向けて独自のソリューションを長年構築してきましたが、広告エコシステムの繁栄には業界とのコラボレーションが不可欠だとも考えています。Privacy Sandbox技術との統合は、検証完了後に直接、Chromeチームにフィードバックを提供し、APIの進化を伝えることで、クライアントの皆様にとっての価値を最大化できるようにしています。当社では現在、ターゲティングと計測のためのPrivacy Sandbox API(Protected Audience API、Topics API、Attribution Reporting API)を検証しています。また、同時に、IAB Tech Labのような業界関係者と協力し、規模に応じて採用できるプライバシー重視のソリューションを模索、評価、開発し、広告主の皆様に選択肢を提供しています。Chromeと同様に、他のブラウザも独自のソリューションを開発することを選択しており、当社では、すでにこれらの技術のいくつかを検証し、今後も継続していく予定です。
Cookieレス時代の広告: 変化への対応は困難だが必要不可欠
業界で起こる他のさまざまな変化と同様、cookieレス広告エコシステム内で成果を上げる方法を研究し、Privacy Sandboxを含む、実行可能な代替技術を開発するには、労力と時間を要します。しかし、変化には課題が伴うものの、広告エコシステムを再構築するという機会でもあります。検証の実施は、広告主やパブリッシャーの皆様がインサイトを得るための重要な手段です。そして、そもそもなぜこういうことが起こっているのか、その理由を忘れてはなりません。広告主を支援するプライバシーを尊重したIDソリューションの健全なエコシステムとして、消費者のプライバシーを改善し、消費者によるコントロールを強化することが究極の目標です。
当社とPrivacy Sandboxが非アドレサブルな環境の解決策に
当社では、この新たな広告エコシステムにはさまざまなソリューションが必要だと考えています。ここ数年、アドレサブルな環境は激減しており、2025年にはサプライの大半が、ユーザーIDが利用できない非アドレサブルなものになると予測しています。これは、ユーザー識別子や広告目的でデータを使用することに対する消費者の同意が不足しているためです。例えば、ユーザーがログインしていないSafariやFirefoxのようなcookieレスのウェブ在庫や、トラッキングをオプトアウトしているiOS 14.5以降のユーザーなどのアプリ在庫を指します。メディアバイイングの領域では、いわゆるウォールドガーデン在庫に対する独占的な投資によって非アドレサブルな在庫を回避することは選択肢の一つではありません。人為的に制限されたプールにメディアバイイングを制限することは、必然的にリーチ拡大の重要なソースを失うことになります。米国の消費者がオンラインで費やした時間の66%はオープンインターネット上の利用であり、34%はウォールドガーデン内となっています。
広告主やパブリッシャーの皆様の成功のためには、非アドレサブルな環境に対してさまざまなソリューションを利用できるようにすることが重要です。当社では過去4年間、非アドレサブルなサプライに対応する独自のソリューションとしてNext-Gen Solutionsの構築に投資してきました。Next-Gen Solutionsは当社の IDソリューションの一部であり、広告主やパブリッシャーの皆様がシグナルロスに将来的に対応できるようにします。さらに、広告の新時代に向け、業界がより迅速に動いてさまざまなソリューションを広告主やパブリッシャーの皆様に提供できるようにするため、IAB TechLabのような業界団体との協力が極めて重要であると考えています。Privacy Sandboxは非アドレサブルの環境にも対応しているため、当社のDSPに素晴らしい付加価値を与えてくれると確信しています。
当社におけるPrivacy Sandboxの検証
Privacy Sandboxの重要な検証段階では、エコシステム全体が関わることが重要であり、この初期段階におけるパブリッシャー各社の参加が鍵となります。現在、サードパーティーcookieが無効化されているChromeのトラフィックはわずか1%であるため、できるだけ多くのパブリッシャーとドメインがProtected Audienceにオプトインすることが重要です。検証段階を通じて、さまざまなパブリッシャーから幅広いサプライにアクセスしていただくことで、より多くの結果を集めることができ、最終的には完全にcookieレスな世界へのスムーズな移行を可能にします。現在、Privacy Sandboxで透明性の高い検証を実施している最大のDSP企業の1社として、当社では、すでにPrivacy Sandboxの検証に参加いただいている広告主やパブリッシャーの皆様が、より健全で透明性の高い広告エコシステムの再構築に特に注力されているのを目にしています。
Chromeのサードパーティーcookieの廃止が迫るなか、それに向けた取り組みの進捗を皆様にお伝えできることを嬉しく思います。当社では以下のレポートを作成し、定期的に更新していきます。このレポートは、米国で供給しているユニークドメインのパブリッシャーの数(Displayフォーマットのみ)と、現在Protected Audienceと当社DSPを活用してPrivacy Sandboxの検証を実施しているSSP(GoogleのSSPを除く)の数を示しています。より多くのパブリッシャーとSSPがProtected Audienceと統合すればするほど、私たちは検証からより多くの結果と信頼できる学びを集めることができ、Privacy Sandbox技術を改良することができます。
グラフからのインサイト:
- 3月のSSPとウェブドメインの採用は全体的に増加傾向にある。
- 3月中に新たに3つのSSPがProtected Audienceオークションの処理を開始し、その数は合計で8つに。
- また、Protected Audienceオークションを採用するパブリッシャーのドメインも増えており、わずか数週間で2桁の伸びを示している。
- 一部のSSPがProtected Audienceの有効性を検証し、それに基づいて設定を変更しているため、若干の変動が見られる。また、一部のSSPは、検証用のテストグループとコントロールグループとして使用されるChrome Mode AとMode Bとして適切にラベル付けされていないトラフィックをフィルタリングしている。このため、ウェブドメイン全体の有効性が短期的に低下することがあるが、これは検証段階であることから予想と想定されることである。
今日、広告主の皆様は当社独自のIdentity Testingをご利用いただけます。また、当社では現在、Privacy Sandboxの内部検証も実施しています。パブリッシングエコシステムがこの6ヶ月で進展したことに満足しており、広告エコシステム全体でもさらなる進歩を遂げることを期待しています。
¹米国における滞在時間分布(2020年)、statista.com
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Gio Gardelliについて
Gio Gardelliは、当社のAds Data ProductsのVice Presidentで、当社のDSPのターゲティング、ID、計測、データインフラストラクチャなどの広告製品の責任者です。2018年に入社して以来、Gioは、広告主とパブリッシャーがcookieやIDFAのない将来に備えるためのソリューション(ConnectID、Next-Gen solutionsなど)の構築に取り組んでいます。また、GioはIAB Tech LabのBoard Memberでもあり、デジタルメディアエコシステム向けの革新的なソリューションとガイダンスの開発を主導および協力しています。
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